渋谷 知美

定価: ¥ 798
販売価格: ¥ 798
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発売日: 2003-05
発売元: 文藝春秋
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日本の童貞 (文春新書)を読んでみた。う~むと納得しきりである。
なんといっても、著者渋谷 知美の意欲が読み取れるから、ついつい読んでいってしまう。
ぐいぐい日本の童貞 (文春新書)に引っ張られているという感じか?日本の童貞 (文春新書)に類する本は、あんまり多く読んだことがないから比較はできないけれど、これらに類する本の中ではかなり高評価を得るんじゃなだろうか?
やっぱり著者が意欲を持って書くと、いいものが出来上がる。
日本の童貞 (文春新書)は評価が分かれるんじゃないだろうか?読後にそんなことを思った。著者の渋谷 知美はそんなことはちっとも気にしていないんじゃないかと思うけれど。
日本の童貞 (文春新書)を読んだ友人にも聞いた見たのだが、一人は「いい」と言ったが、別なひとりは「そうかな?」と首をかしげた。
試しにまた別な友人にも日本の童貞 (文春新書)を貸してみようと思う。
さて、どんな評価が下されるか?あまり、褒められた事ではないけれど、本には読書以外の愉しみ方があるのだ。
恋愛の自由市場の成立の中で
本書は1972年生まれの女性教育社会学研究者が、修士論文をもとに2003年に刊行した本であり、戦前・戦後日本の雑誌記事の言説分析を通じて、童貞(本書の定義については「はじめに」を、語義の変遷については第4章を参照)の男性に好奇の視線を向ける社会の在り方を問おうとした本である。前近代日本では男性の童貞は重視されなかったが、花柳病予防および貞操の男女平等という観点から、童貞を美徳とする考え方が、19世紀末?1920年代に主に知識層の間で浸透した(平塚らいてうらの花柳病男子拒婚同盟等の案は、彼らの間からも感情的な猛反発を受けたが)。しかし、1960年代半ば以降、雑誌メディアの隆盛の中で、処女の減少と童貞の増加が問題化されると、70年代以降、未経験男性が童貞を恥じる感覚を吐露するようになり、民俗社会の崩壊、恋愛の自由市場の成立とも関連して、80年代には素人童貞という下位範疇、やらはたのような童貞喪失年齢の規範化、童貞を身体的・精神的に病理化する言説、童貞は見て分かるという可視化言説が登場し(これらはどれも根拠薄弱)、童貞言説は爛熟期を迎えた。90年代には一部で童貞復権の動きが見えるものの、80年代的価値観の崩壊までには至っていない。著者は、この「童貞差別社会」の本質として、性を私的領域に配置することにより特権化する一方で、建前とは裏腹に公領域による干渉の下に置く近代の問題性を見、性の相対化、非童貞の相対化、女性の値踏みへの順応といった多様な対応を例示する。テーマゆえに露骨な表現が多いが、多くの言説(巻末に一覧表あり)を丹念に分析し、数量化・類型化した研究であり、全てが自己責任化される自由化した社会の生きづらさを示す本と言える。意外な人物の意外な発言も分かる。
童貞論というより童貞メディア論
この本は筆者が「はじめに」で書いているとおり、「童貞に興味がある人」ではなく
「童貞に興味がある社会」に興味がある人向けの本である。故に童貞そのものをあつ
かっているというよりも、各時代の童貞言説をあつかっている。童貞史というよりも
いうならば童貞メディア史というべきだろう。
雑誌メディアだけに、その社会全体がそのような風潮だったかは疑問である。例えば、
戦前の「童貞がかっこよかった」言説も、時代の主流であったかは謎である。本書で
あつかわれているアンケートにしても、対象となっている人間は東大や京大など、や
たらと学歴が高く、特権階級の人間であるといっていい。前近代まで日本男子は精通
すると因習として性交し、童貞という概念そのものがなかった。その中で精通しても
女性と性交しないとうい童貞は近代的概念であり、童貞を保持することが社会全体で
称揚されていたのだろうか。男、とりわけ市井の童貞にとっては、童貞であることは
やはり屈辱以外何者でもなかったのではないだろうか。
ところで、筆者があつかっている記事が、戦前は学者、作家など、割と学術的なもの
であったのに対して、戦後は週刊誌などの割と大衆に向けて書かれた記事にシフトし
ていくというのも興味深い。そして、戦後の砕けた文体に童貞言説が移されるにつれ
てきわめて露骨な「童貞フォビア」が表れくる。
70年代、80年代は特に酷くて、童貞はマザコンで、包茎で、インポである(っ!!普
通、インポかどうかはセックスして見ないとわからんだろと思うのだが)。「童貞は
早く捨てるべき」というメッセージを雑誌メディアは、知識人に語らせ、専門家の解
説を「曲解」することで生成していった。
童貞メディア論に対して、次数を一つ繰り上げた問いを立ててみると、それは「何
ゆえにメディア(この新書も含めて)は男を性化(童貞喪失)させたがるのか」とい
うフーコーの「性の歴史」の問いのようになってくる。
分析力はみごと
この本では、前半では戦前の童貞言説。後半は戦後の童貞言説を挙げている。戦前と戦後での童貞言説の見事なコントラストを丁寧に描き出した著者には脱帽する。それは大衆化であり、結婚と性と恋愛の分離であり、男女の地位の変化であり、様々な要因を綺麗に描いている。
そして最後に、著者は童貞を恥と思わないための条件を3つほど挙げているが、これも面白い。社会学的な視点と、本人の視点。
後者の視点のほうは、挑発的な意見であり、それまでの議論を台無しにしてしまう可能性もある。しかしそこの捉えようは個人の問題である。
問題があるとすれば、作者の研究の動機がイマイチ理解しえない点で、星四つ。
